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エロ本大佐

「patoさんってけっこう真面目そうですよね」

総務なんかに書類を持っていくと女子社員なんかによく言われる。どうにも信じがたいことだが、黙っているとけっこう真面目そうに見られるようだ。そんなことどうでもいいからストッキング破らせろや、この淫売が!と常日頃から心の中で思っているとは夢にも思わないらしい。

「わたし、真面目な人けっこうタイプだわあ」

などと、社内一エロいと噂の、飲み会で酔った勢いでチンポをチュッパチャップスしたと噂の、総務オブジョイトイの名を欲しいままにしているエロ女子社員山岸さんに言われるとドキドキする。許されるならこのまま総務でオナニーしたい。持ってきた書類で拭きたい、そんな欲求に駆られるってものだ。

表面上の見た目だけで受ける印象ってのはあてにならないもので、どこからどうみても僕が真面目であるはずがない。仕事なんていつやったのか忘れたくらい給料泥棒だし、出勤から帰宅まで職場で寝てたことも、こち亀を熟読していたこともあった。そんな僕がちょっとメガネをかけて無口でいるだけで真面目そうに見られるのだから、表面から受ける印象なんてあてにならないものだ。

最近、いつも行くコンビニで「エロ本大佐」なる不名誉なニックネームを頂戴していることを知った。どうにもこうにも、あまりにエロ本ばかり買ってるのがアルバイト店員の間で知れ渡ってしまったようだ。もし僕が印象どおり真面目そうならば、こんなニックネームで呼ばれたりはしない。

なぜに「大佐」などというそこそこ高い地位、しかも軍部の地位を賜ることになったのか思いを馳せてみると、どうにもこうにもあの事件が影響しているらしいことは想像に容易かった。

ある晴れた日、いつもの如く早朝の爽やかな時間、まだ歯磨き粉のCMとかに出れそうな女学生が往来する時間帯に、何も物怖じすることなく勇気百倍でエロ本を購入した時のことだった。

最近のコンビニの、それもエロ本売り場はとにかく規制が厳しい。中身を見れないよう徹底的にビニールでシールドがしてありやがるのだ。どういった類の嫌がらせかと憤慨すること山の如しだが、まさか29歳にもなってビニールを破ってまで内容を見るわけにはいかない。結果、どうしても表紙から受ける印象だけでエロ本を購入するジャケ買いが横行することになる。

エロ本のジャケ買いは危険極まりない。表紙に騙されて内容がチンカスだったなんてかわいいほう、自分の思ってるジャンルと違っていて抜けなかった、具体的には人妻系かと胸を弾ませて買ったらフタナリ系だった、なんてものは笑い話のレベル。ジャケ買いにはもっと深刻で笑えない、命すら取られかねない惨劇が待ち構えているのだ。

そう、それが同じエロ本を何度も買ってしまうという悲劇なのだ。近所のボケた爺さんが同じ週刊誌だったかゲートボールマガジンだったかを何度も買ってくる、という冗談めいた逸話を笑い話として聞いていたが、それと同じ現象が自分の身にも降りかかったのだ。

表紙から受ける印象だけでエロ本を買うジャケ買い。やはり、良い表紙には何度となく惹かれてしまう。まさか、「金に困った人妻が何でもしますと懇願」なんてあるわけない!「痛みを伴う痴漢改革、政治秘書は肉弾戦」なんてあるわけない!と表紙に踊る文句に騙されて買ってしまうわけだ。しかしながら、エロ本ってのは中身こそが大事であって、表紙で抜く人はあまりいない。あくまで付属品である表紙のことはあまり覚えてないのもこの悲劇の一因となっているだろう。

結果として、僕のエロ本ライブラリーには3冊くらい同じエロ本が鎮座している。これは良いエロ本だろう、と何度も同じエロ本を買ってしまうのだ。エロ本の刊行周期ってのは週刊誌などのそれと違ってハッキリしない部分がある、さらに似たような雑誌名のものが多い、そのため、本当に何度も何度も同じエロ本を買ってしまうのだ。

しかも悲しいことに読んでいてすぐに同じエロ本だと気がつかない。うおーと大興奮、大車輪で読んでいて、中ごろまで読んだあたりで異変に気がつく。この異様におっぱいがデカいキャラはどこかでみたことがあるぞ。急いでライブラリーを引っ掻き回すと、同じ表紙のエロ本が2冊出てくる。全く同じ表紙のエロ本3冊を前にがっくりとうなだれる29歳。それはどんな戦地の孤児よりも泣ける絵図だ。

あのような悲劇を繰り返してはならない。過ちを繰り返してはならない。必死の思いでエロ本コーナーに仁王立ちする僕。表紙に心惹かれたエロ本を三冊並べ、必死で吟味する。いや、これは吟味と言うよりは記憶の引き出し作業に他ならなかった。

このチョイスした3冊はどれも甲乙つけがたい出来だ。どれも僕の脳髄の主にピンク色の部分を適度に刺激してくれる。おそらく、内容を見て不満に思うことはないはずだ。

しかしながら、問題は、過去にこのエロ本を買ったことがあるかという点だ。どれも最高に刺激的な表紙だ、それだけに過去にも心惹かれて同じエロ本を買っている可能性は多分に高い。

1冊目はいつも買っている月刊誌エロ本の最新号だ。定期購読しているエロ本だ、もし過去に買っているならすぐに分かりそうなものだが、残念ながら過去、幾多の失敗をこのエロ本で繰り返している。同じものを月に3冊買った経験がある。過信は禁物だ。

2冊目は今まで見たこともない雑誌名。発売日もつい最近と新しい。コレはかなり有力で、未見のエロ本である可能性がかなり高い。しかしながら、どうしても表紙脇に描かれているネグリジェ姿のキャラが引っかかる。どうもこのキャラをどこかで見たような気がする。これはかなり危険だ。

3冊目は普段は手にしないような劇画調のディープなエロ本。表紙に鎮座する女性がゴルゴみたいなタッチで描かれている。表紙からして藤子不二雄の怖いほうの絵を描く人みたいなタッチだ。普段は見向きもしないジャンルのエロ本を買えば確実にかぶることはないだろう。しかし、過去にもそうやって普段のジャンルを避けて購入した可能性も否めない。また同じように購入してしまったら、ジャンル違いなだけにダメージは計り知れない。

三冊を前に考えに考え抜く僕。思い出せ、思い出せ、この表紙のエロ本を買った事があるのか、どうなんだ、過去の自分。そろそろ考え出して30分くらいが経過し、店員も異変に気が付きだした。しかしそんなことお構いなしに悩みぬく。

べローンと中を見て確認すれば一発なのだが、青少年保護のためか何なのか知らないが開けないように強固に閉じられたビニールがそれを阻む。憎い、このビニールが殺したいくらいに憎い。こんなしょうもない案を考えやがったやつを吹き矢で暗殺したい。

ここで僕はある根本的な解決法を思いついた。表面から受ける印象だけでエロ本をジャッジメントするから良くないんだと。世の中には中身が最高にイケてるのに表紙がクソなエロ本は山ほどある。そういった中身で勝負なエロ本をチョイスしなければならないんだ。

表紙だけ見て琴線に触れるエロ本をチョイスするから同じのを何度も買ってしまうんだ。だったら、表紙なんて関係なしに内容を想像するとか、本から溢れる禍々しきオーラとかを感じ取って購入すればいいんだ。そうすれば同じのがかぶることはない。

選考対象だった3冊を投げ捨てましてね、正確には真面目なんできちっとあった場所に戻したんですけど、エロ本コーナーの下段の奥のほうから掘り起こしてエロ本をチョイスしましたよ。

表紙がボーイッシュな感じの女の子で、とてもじゃないが素面で読めないような雑誌名なんですけど、普段の僕なら絶対に心惹かれないだろう表紙です。あまりボーイッシュとか趣味じゃないですからね。しかしながら、手に取った重量以上に重さを感じる圧倒的な存在感。コイツは絶対に凄いはずだぜとレジに持っていったのです。

見た目の印象でエロ本選びはもうやめた。これからは感じるオーラでエロ本を選ぶ。これでもう、重複して涙することなんてなくなるはずだ。今日は僕の卒業式。これまでのエロ本ライフを捨て、新しいエロ本ライフを手に入れるんだ。

レジが女性店員であろうと、レジ付近に女学生がキャピキャピと並んでいようが関係なし。ただ任務を遂行する軍人のような猛々しさでエロ本片手にレジに並んだのです。

バサッと無造作に置かれたディープなエロ本に動揺を隠せない店員。バーコードを読み取ろうと裏返しにしたら包茎手術の広告ですからね。なんおためらいもなく「包茎のままだとちょっと怖いかも!」とか書いてあるんですよ。何度やってもこの瞬間の女性店員の動揺は最高だね。

「390円になります」

とか、か細い、絶対に乳首がピンクであろうと断定できるカワイイ声で言う女性店員。この瞬間に僕の興奮はマックス。悠然と財布を出してお金を支払いますよ。

けれどもね、財布を開けてビックリ。23円しか財布に入ってないんですよ。23円ですよ、23円。そ、そんなはずはない!と財布の札コーナーを覗くと、変な割引券とかしか入ってないんです。500円玉かと思ったコインは近くのラッキー会館のスロットのコインだしよ、なんでこんなものが財布に入ってるんだと憤慨するやら動揺するやら、もう死にたいやら大変な騒ぎですよ。

これがね、肉まんを買うとかだったら理解できますよ。それで金が足りないなら、ガハハと笑い飛ばして出直して来れば良い。けれどもエロ本ですよ。しかも1時間近い時間悩みぬいて、最後には下の方の返品間近なエロ本をチョイスしたんですよ。もう注目度はうなぎのぼりでいまさら23円しかないとは言い出せない。

「えっと、あの。その・・・」

これが数円足りないとかなら勘違いで済むんですけど、23円ですからね。所持金23円でエロ本買いに行くとか頭が腐ってるとしか思えない。恥ずかしすぎてどうしても切り出せない。

そうこうしてると、あまりに金を出さない僕に店員(乳首ピンク)は怪訝な目つき。この凍てつくような冷たい目つきだけで俺はイケる!とか言ってる場合じゃない。おまけに不穏な空気を感じ取ったのか、レジ付近の女子高生(たぶんヤリマン)がヒソヒソと語りだす始末。

しかし、このまま無言で突っ立っていたらそのうち警察とか呼ばれかねないので、なんとか金がないことを伝えようと口を開いたのですが、かつてないほどに気が動転していて

「お金がないであります!」

と何故か軍隊口調に。軍部に報告するみたいにピシャリと言ってた。しかも照れ隠しからかちょっと敬礼してた。いくらなんでも動揺しすぎ。僕はね、この瞬間の店員さん(乳首ピンク)のポカーンとした表情、一生忘れない。

さらに、救いようのないことに、ポカーンとした僕と店員さんの間に流れる不穏な空気、その重圧に耐えられず、何か喋らなくてはとさらに気が動転してしまい。

「お金を下ろしてくるであります!」

またもや軍隊口調で。あれだ、僕は狂ってるのか。それ以前に、金を下ろしてまでこのエロ本が欲しい人みたいで救いようがないじゃないか。

「あ、はい、あちらにATMがありますから」

と、店内に鎮座するATMを指差され、このまま逃げてやろうかと思ったのに逃げられない四面楚歌。この状況に更に気が動転して

「かたじけない」

とか今度は武士みたいになって金を下ろしにいく始末。そんな苦闘を経てエロ本を購入しましたよ。金下ろしてる間、ずっとエロ本裏の包茎手術の広告が晒されている状態だったよ。

結果、そのあまりに異常なエロ本チョイスやら、金が足りなかったという事実、おまけに意味不明な軍隊口調が伝説として語り継がれ、今ではすっかりバイト仲間の間で「エロ本大佐」と揶揄されているわけです。なんで大佐なのかは知らない。この間、焼きそば買いにいったら「エロ本大佐がきたよ」とジャリガキ店員が言ってたから間違いない。

ちなみに、そのような激闘を経て手に入れたエロ本ですが、ボーイッシュな子が表紙だったエロ本は本当に男だったみたいで、ホモとかゲイとかの人が読むようなとんでもなくディープなエロ本でした。微妙に中性的な男の子がマッチョにやられる話ばかりなのな。こんなディープな、専門色の強いエロ本をコンビニに置くな。

さすがにそのような趣味ありませんので、あまりの抜けなさにガックリうなだれ、ライブラリーに収めようとしたのですが、そうすると同じ本がもう一冊ありました。さすがの大佐もこれには挫折を味わったよ。

人間もエロ本も同じです。表紙ばかりに惑わされていると大変なしっぺ返しを食らうことがあるのです。「真面目そう」と言われる僕が「エロ本大佐」、これには総務の誰しもがビックリするに違いない。

見えている表紙だけでなく、人の本質を覆い隠すシールを破りさってその中身で判断しないといけない、自分を振り返りつつ、そのような心構えで他人に接したいな、と思うのです。

でも、見た目的に近くのコンビニ店員は絶対に乳首ピンクだと思うし、総務の山岸さんは主食がチンポレベルでエロい、そう思うのであります。


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